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手がしびれる・つまずきやすいと感じていませんか?

「手がしびれて字が書きにくい」「つまずきやすくなった」――健康診断のレントゲンで見つかることもあるこの病気。国が定めた「指定難病」の一つで、要件を満たす場合に医療費の助成が受けられます。

後縦靱帯骨化症(OPLL)とは、背骨の中を通る後縦靱帯が骨のように硬くなり、脊髄や神経を圧迫して手足のしびれや歩行障害を引き起こす病気です。厚生労働省が定める指定難病の一つで、医療費助成制度を利用できます。40〜60代の男性に多く、日本人を含む東アジアの方に多い疾患です。軽症では保存療法で経過観察しますが、症状の進行時には前方除圧固定術や後方椎弓形成術を行います。当院では、難病指定の手続きを含め専門的なサポートを行っています。

こんなお悩みありませんか?

一つでも当てはまったら、このページが役に立ちます。

  • 手がしびれて、字が書きにくくなった。ペンや箸がうまく使えない。
  • 最近つまずきやすくなった。階段の上り下りが不安になった。
  • シャツのボタンがうまく留められない。小さなものがつかみにくい。
  • 健康診断のレントゲンで「背骨に骨化がある」と言われた。
  • 両手や両足がしびれる。首を動かすと手にピリッと電気が走る。
  • 「後縦靱帯骨化症」と言われたが、どんな病気かよくわからない

この病気は国が定めた「指定難病」です。適切な治療で症状を改善できる可能性があり、医療費の助成制度を利用できる場合があります。まずは「どんな病気なのか」を知ることから始めましょう。

この病気って何?

「背骨の中にある『すじ(靱帯)』が骨のように硬くなって、神経の通り道を狭くしてしまう病気」です。

背骨の中には、脳から手足につながる大事な神経(脊髄)が通っています。この神経の通り道を「脊柱管」といいます。脊柱管の中に「後縦靱帯」というすじがあります。普通はやわらかいのですが、これが骨のように硬くなってしまうのがこの病気です。わかりやすく言うと、「トンネルの壁が厚くなって、中の通路がどんどん狭くなる」イメージです。通路が狭くなると、中を通っている神経が圧迫されて、手足のしびれや動かしにくさが出てきます。

脊柱管の断面図:後縦靱帯の位置を示す
正常な脊柱管:十分な通路がある
骨化した脊柱管:通路が狭くなっている
靱帯(すじ)が骨のように硬く分厚くなることで、神経の通り道が狭くなります。トンネルの壁が厚くなって通路が狭くなるイメージです。

日本人に多い病気です

後縦靱帯骨化症は、日本を含む東アジアの方に特に多い病気です。欧米の方と比べて数倍多いことがわかっています。40歳から60歳代の男性に多く見られ、男性は女性の約2倍の発症率です。

この病気は、厚生労働省が定める「指定難病」に認定されています。「難病」といっても「治らない病気」という意味ではありません。発症の仕組みがまだ完全には解明されておらず、治療法の確立が難しい病気という意味です。指定難病に認定されると、症状などの基準に応じて医療費の自己負担が軽減される助成制度を利用できます。

医学的な分類

後縦靱帯骨化症は、骨化の形によって連続型(複数の椎体にわたって連続した骨化)、分節型(それぞれの椎体の後面に限局した骨化が飛び飛びに見られる)、混合型(連続型と分節型が混在)、限局型(椎間板の高さに限局した骨化)の4つに分類されます。頸椎(首)に発生することが最も多く、次いで胸椎(背中)、腰椎(腰)の順です。

ご家族にこの病気の方がいる場合、必ず発症するわけではありません。しかし、手のしびれや歩きにくさなどの症状が出た場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。

なぜ起こるの?

後縦靱帯骨化症がなぜ起こるのか、はっきりとした原因はまだわかっていません。これが「指定難病」に指定されている理由の一つです。ただし、いくつかの関連要因が指摘されています。

遺伝的な要因

ご家族にこの病気の方がいると、発症する可能性が高いことがわかっています。いくつかの遺伝子が関係していると考えられています。

東アジアの方に多い

日本人をはじめ、中国や韓国など東アジアの方に多い病気です。欧米の方と比べると数倍の頻度で見られます。人種的な体質が関係していると考えられています。

生活習慣との関係

糖尿病や肥満との関連が指摘されています。ただし、これらがあるから必ず発症するわけではありません。

40〜60歳代の男性に多い

中年以降に見つかることが多く、男性は女性の約2倍です。ホルモンや骨の代謝が関係している可能性があります。

どんな症状が出るの?

後縦靱帯骨化症では、神経(脊髄)が圧迫されることで手や足にさまざまな症状が出ます。首の部分で起こることが多いため、手の症状から始まることが多いです。

手のしびれ・不器用さ

最も多い初期症状です。両手がしびれる、字が書きにくい、箸がうまく使えない、ボタンが留められないなど。これを「巧緻運動障害」といいます。手先の細かい動きが難しくなります。

歩きにくさ・つまずきやすさ

足がもつれる、つまずきやすい、階段が怖い。足の運びがぎこちなくなり、小走りができなくなります。進行すると、歩くこと自体が難しくなることもあります。

足のしびれ・つっぱり

足の裏がしびれる、足がつっぱる感じがする。地面の感覚がわかりにくくなることがあり、砂利道や暗い場所で歩きにくさが増します。

排尿の問題

症状が進むと、トイレが近くなったり、出にくくなったりする方もいます。これは脊髄の圧迫がかなり進んでいるサインです。早めの受診をおすすめします。なお、脊髄が圧迫されるため、多くの場合両手・両足に症状が出るのが特徴です。

放っておくとどうなるの?

後縦靱帯骨化症は、多くの場合ゆっくりと進行します。しかし、留意すべきは転倒などによる急激な症状悪化です。

初期:「ちょっとしびれるかな」

手がなんとなくしびれる。字がやや書きにくい。この段階では「使いすぎかな」「年のせいかな」と見過ごされがちです。骨化があっても症状が出ない方もいます。

進行:「日常生活で困ることが増えた」

ボタンが留められない。箸がうまく使えない。つまずきやすくなる。歩く速度が遅くなり、走ることが困難になります。

重度:「自分の力で生活するのが難しくなる」

手を使う動作が極端に難しくなる。歩行に杖や介助が必要。排尿や排便にも問題が出てくることがあります。骨化によって神経の通り道がすでに狭くなっているため、転倒や交通事故などのちょっとした衝撃でも脊髄が傷つきやすい状態です。軽い転倒をきっかけに、それまで軽かった症状が突然悪化することがあります。骨化が見つかっている方は、日頃から転倒予防を心がけてください。

かんたんセルフチェック

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病院ではどんな検査をするの?

「病院に行ったら何をされるんだろう?」と不安に思われる方も多いと思います。検査の流れをあらかじめ知っておくと、安心して受診できます。

お話を聞かせてください(問診と身体検査)

「いつから」「どんな症状が」あるかをお聞きします。手の動きのテスト(グー・パーテスト)や、歩き方の確認も行います。10秒間でグー・パーを何回できるかは、大切な指標の一つです。

画像で確認します(画像検査)

レントゲン:背骨全体を撮影し、骨化の有無を確認します。CT(詳細な評価に有効):骨化の範囲や大きさ、形を立体的に確認できます。骨化の分類もCTで判断します。MRI:脊髄がどの程度圧迫されているか、脊髄自体にダメージがあるかを確認します。

あなたに合った治療プランをご提案

骨化の範囲や形、症状の程度をもとに、適切な治療法をご相談しながら決めていきます。指定難病の申請手続きについてもご案内します。後縦靱帯骨化症の診断では、CT検査が有効です。骨化がどこからどこまで広がっているか、どのくらいの厚さか、どのタイプかを正確に把握できます。

どうやって治すの?

骨化した靱帯を薬で元に戻すことはできませんが、神経の圧迫を取り除くことで症状の改善が期待できます。

軽症の場合:保存療法+経過観察

症状が軽い場合、まずはお薬や装具で様子をみます。お薬でしびれや痛みを和らげ、神経の血流を改善します。頸椎カラー(首の装具)で首の動きを制限して神経への負担を減らします。特に首を後ろに反らす動作を避けることが大切です。骨化は時間とともに大きくなることがあるため、定期的にCTやMRIで確認します。

手術による治療:神経の圧迫を取り除く

日常生活に支障が出るほど症状が進んだ場合、手術を検討します。手術の方法は大きく分けて2つあり、骨化の広がり方によって選択します。

OPLLの4つの分類:連続型、分節型、混合型、限局型
骨化のタイプ(広がり方)によって、治療の方針が変わります。CTで的確に分類して、適切な手術方法を選択します。

前方から(前方除圧固定術)

前方除圧固定術:首の前からアプローチして骨化を取り除く
骨化を直接取り除ける。骨化が1〜2か所に限局している場合に適する。根本的な除圧が可能。

後方から(椎弓形成術)

後方椎弓形成術:背中側の骨を広げて神経のスペースを作る
骨化が広範囲に及ぶ場合に適する。後ろ側の骨を開いて神経の逃げ場を作る。安全性が高い手術。
骨化が1〜2か所に限局している場合は前方から骨化を直接取り除き、骨化が広範囲に及ぶ場合は後方から骨を広げて神経のスペースを確保します。CTで骨化の広がりを確認して判断します。

手術方法の選択基準(詳細)

前方除圧固定術:骨化が1〜3椎体に限局している場合に選択。首の前側から椎体と骨化した靱帯を取り除き、骨移植やケージで再建・固定します。骨化を直接除去するため、根本的な除圧が可能ですが、手術の難易度はやや高くなります。

後方椎弓形成術(ラミノプラスティ):骨化が3椎体以上の広範囲に及ぶ場合に選択。後方の骨(椎弓)を片側で切って開く「片開き式」が一般的です。骨化には触れず、脊柱管を広げることで脊髄の除圧を図ります。安全性が高い手術です。

神経のダメージは、長く放置するほど回復しにくくなります。「もう少し様子を見よう」と思っているうちに、転倒で急に悪化することもあります。症状が進んでいる場合は、早めの手術が回復の可能性を高めます

要件を満たす場合に医療費の助成が受けられます

後縦靱帯骨化症は、厚生労働省が定める指定難病に認定されています。認定を受けると、医療費の自己負担が軽減されます。

指定難病の医療費助成制度とは

指定難病と認定され「受給者証」が交付された患者さまは、該当する医療費の自己負担割合が2割(通常3割)となります。さらに、所得に応じた月額上限額が設定され、上限を超えた分は公費で負担されます。この制度を利用することで、長期にわたる通院や手術の費用負担を大きく減らすことができます。

申請の流れ

  • 1. 難病指定医の診断を受ける:都道府県が指定する「難病指定医」に診断書を書いてもらいます。当院でも対応しています。
  • 2. 申請書類を準備する:臨床調査個人票(診断書)、住民票、課税証明書などを揃えます。
  • 3. お住まいの窓口に申請する:都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に提出します。
  • 4. 「医療受給者証」が届く:認定されると受給者証が届き、医療機関の窓口で提示すると自己負担が軽減されます。

手続きの方法がわからない場合は、当院のスタッフがご案内いたします。診断書の作成から申請のサポートまで、できる限りお手伝いいたします。

よくあるご質問

Q 後縦靱帯骨化症は治りますか?
骨化した靱帯を薬で元に戻すことはできません。しかし、手術で神経の圧迫を取り除くことで、しびれや歩きにくさなどの症状が改善することが期待できます。軽症の場合はお薬と経過観察で経過を見るケースも多くあります。
Q 指定難病の医療費助成は誰でも受けられますか?
後縦靱帯骨化症と診断され、一定の基準を満たす方が対象です。症状の程度や日常生活への影響などが審査されます。まずは難病指定医に相談し、診断書を書いてもらうところから始めましょう。当院でも対応しています。
Q どんな人がなりやすいですか?
40〜60歳代の男性に多く、日本人を含む東アジアの方に特に多い病気です。ご家族にこの病気の方がいると発症率が高いことがわかっています。また、糖尿病や肥満との関連も指摘されています。
Q 骨化があると言われましたが、症状がありません。手術は必要ですか?
症状がなければ手術は必要ありません。骨化があっても症状が出ない方は多くいらっしゃいます。ただし、骨化は時間とともに大きくなることがあるため、定期的な経過観察をおすすめします。また、転倒には十分注意してください。
Q 手術後、どのくらいで日常生活に戻れますか?
手術の内容によりますが、一般的に2〜3週間で退院される方が多いです。日常生活への復帰は1〜3ヶ月が目安ですが、しびれなどの神経症状の回復には数ヶ月から1年以上かかることもあります。
Q 転倒に注意が必要と聞きましたが、なぜですか?
骨化によって神経の通り道がすでに狭くなっているため、転倒や追突事故などの軽い衝撃でも脊髄が傷つきやすい状態です。もともと軽い症状だった方が、転倒をきっかけに突然手足が動かなくなるケースもあります。滑りにくい靴を履く、手すりを使う、段差に注意するなどの対策を心がけてください。
Q 遺伝しますか?家族も検査したほうがいいですか?
ご家族に後縦靱帯骨化症の方がいると発症率が高いことがわかっていますが、必ず発症するわけではありません。ご家族に手のしびれや歩きにくさなどの症状が出た場合は、念のため早めに受診されることをおすすめします。
Q 前方手術と後方手術、どちらがいいですか?
どちらが良いかは骨化の範囲と位置によって決まります。骨化が1〜2か所に限局していれば前方手術、広範囲に及んでいれば後方手術が一般的です。CTの画像を見ながら、適切な方法を一緒に検討します。

まずはご相談ください

「年のせいだから仕方ない」とあきらめる必要はありません。原因がわかれば、楽になる方法が見つかるかもしれません。当院は全78床が脊椎専門、外来医師全員が脊椎専門医です。まずはお気軽にご相談ください。

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参考文献・エビデンス

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  2. Matsunaga S, Sakou T. "Ossification of the posterior longitudinal ligament of the cervical spine: etiology and natural history." Spine, 2012.
  3. 日本整形外科学会 診療ガイドライン委員会「頸椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン 2020」南江堂.
  4. Iwasaki M, et al. "Surgical strategy for OPLL: anterior vs posterior approach." Spine, 2007.
  5. Fujiyoshi T, et al. "A new concept for making decisions regarding the surgical approach for cervical OPLL." Spine, 2008.
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  7. Hirabayashi K, et al. "Expansive open-door laminoplasty for cervical spinal stenotic myelopathy." Spine, 1983.
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  9. Kato S, et al. "Epidemiology of OPLL in Japan: a nationwide survey." Journal of Orthopaedic Science, 2020.
  10. 難病医学研究財団「難病患者への医療費助成制度の手引き」2024.